■プロローグ 季節は梅雨。 男は宿を訪れた。 その宿は人里離れた田舎町……秘境と言っていいほどの山間にあった。 天気は予想通りの雨。 家で退屈するよりも、気晴らしにとやってきた。 バス停につくと、1人の女性が傘を差しだしてくれた。 【紅花】 「はい、傘。折りたたみじゃあ少し濡れちゃうでしょ。梅雨の時期に来るなんて雨が降るに決まってんじゃん、旦那様。……まー、それも狙ってのことなのかわかんないけどさ」 【紅花】 「ま、こういう季節だからさ。外でなにやらとすることもできないし……ひとまずはお宿に行こっか。…… ...