「お兄ちゃん大好きなの……、ねえ、こっち見て……?」 「はぁー……」 地を這うようなため息を漏らした自分に自嘲しながら、午後の講義の後の帰路を辿る。毎日の大学の講義はついていくのも大変で、バイトがない日は一人暮らしの自宅に帰るのが楽しみなはずなのに、今はとにかく足が重い。 原因は半年前に遡る。○さな時奔放な母と離婚した後、父は頑張ってシングルファーザーとして自分を大学までやってくれた。そして大学に入学が決まった時、父は意を決したような顔をして、自分に打ち明けた。 「お前に紹介したい人がいる」と。 俺も真面 ...