この村には、凶作の兆しが迫るときだけ行われる儀式がある。 その名を―――「神籬の儀(ひもろぎのぎ)」。 作物に命を支えられる村では、不穏な年になると年長者たちが「兆し読み」を行い、不作の可能性が告げられる。 そうなると、村人全員が神聖な場に集い「天の器」となる贄(にえ)を選ぶ。 贄に選ばれるのは、健康で心が強く、村人から信頼される者。 名誉である一方、重い責務に誰もが畏れを抱く。 贄は村の中心にある「神籬堂(ひもろぎどう)」に3日間こもり、 生命の舞を捧げ、断食しながら村人全員の名を唱え、祈り続ける。 そ ...