3日間の休みもあっと言う間。 赴任先へ戻るため夫、弘光はタクシーの後部座席に 自身のボストンバッグを積み込んだ。 早朝の住宅街。とあるマンションの前に1台のタクシーが停まっていた。 その横で若い夫婦が言葉を交わしている。 「また連絡するよ。」 「うん、気を付けてね。」 夫の古谷(ふるや)弘光(34)は建設会社に勤め現在単身赴任中。 4カ月に1度程度、妻の莉緒(26)が待つ自宅マンションに帰ってくる。 後部座席のドアが閉まり、朝の静かな住宅街にエンジン音が響く。 次第にそれは小さくなっていった。 「もう戻ら ...