サヤは苛立っていた。 自身の進学について親と意見が合わず、解決策が見いだせなかったためだ。 急遽仕事に出ることにし、常連客であるトロヤマに電話をかけるも、むなしくコール音が響くだけ。 電話を切り、ため息をつきつつ電話を仕舞うと、ふと飛び込んでくる見慣れた顔。 不格好なフォームで汗だくになりながらひいこら走ってくるその丸っこい男に、思わずサヤは破顔する。 しかし、そんな顔を見られるのは恥ずかしい。少なくともこの男には。 一瞬で顔を引き締め、その男の前に立ちはだかりつつ、声をかけた。 「ナニしてんの?」 ・成 ...