バルツ公国某日。 俺は一人の少女に詰め寄られていた。 「……あんたが、師匠の言ってた『先生』? なんか、あんまり先生っぽく見えないんだけど……」 俺には『先生』など全く身に覚えがない。 恐らく、他の誰かと勘違いをしているのだろう。 だが、俺はこれをチャンスだと考えた。 彼女の名前はイオ。バルツ公国で暮らす魔導師の卵。 少々生意気なところもあるが、根は優しく、人々の笑顔の ために魔法を覚えようとする努力家だ。 「イオちゃんだよね?話はザカ大公から聞いてるよ」 話は、およそ1時間ほど前に遡る。 「師匠!今日か ...