僕の恋人の和明――カズ兄は明日、結婚する。 もちろん相手は僕じゃない。どこかの大企業のご令嬢だそうだ。 大学のゼミの先輩だったカズ兄は、地方銀行とはいえ頭取の息子で、 身なりにも、言葉や仕草にもどこか品がある、いわゆるお坊ちゃんだった。 でもそんなことは鼻にもかけない、いつも朗らかで、優しくて、誰にでも好かれる先輩で… どうしてか、特に僕とは仲良くしてくれた。 夕食の後も、びっくりするほどいつも通りの時間が過ぎていく。 シャワーの後、インスタントのコーヒーを入れて、カズ兄の脚の間に座って、流しっぱなしのテ ...