息子の未来のために――主婦が踏み入れた甘美な地獄。 誰もが羨む「理想の家庭」。 夫は大企業のエリート管理職。 子どもたちも順調に育ち、人生は穏やかに過ぎていくはずだった。 だが、運命は一本の電話から狂い始める。 〇校球児の次男・勇斗が迎える、人生を左右する最後の夏。 エースとして活躍する彼の前に立ちはだかる‘最後の壁’は、 チームを率いる、野球部監督――斎藤。 「次の試合の先発…悩んでいるんです」 「親御さんの‘誠意’、どこまで見せてくれますか?」 静かに差し出されたその手が、 平凡な主婦・あかね(51) ...